〈そういうものだ〉〈それがどうした〉
村上春樹のエッセイの中にでてきた言葉を最近よく思い出すんですけど、ちょっと引用してみますね。
「〈そういうものだ〉と〈それがどうした〉という言葉は人生における(とくに中年以後の人生における)二大キー・ワードである。経験的に言って、このふたつの言葉さえ頭にしっかりと刻みこんでおけば、たいていの人生の局面は大過なくやりすごせてしまう。」
なかなか含蓄ある発言ですよね。
日本に比べて大雑把なところのあるモンゴルの生活はある意味気楽ではあるのですが、それでもウランバートルに暮らしていると、理不尽で不合理なこと、不可解で不愉快なこと、汚くて臭いものに日常的に接することになるわけで、そんな時は上に引用した言葉をよく思い出します。
普段の生活の中でいつも腹を立てていたり、不愉快なことをいつまでも覚えておいてもしょうがないので、〈そういうものだ〉と割り切って考えるのが心を穏やかに保つ秘訣なんじゃないかあ。
ここはモンゴルなんだものね。自分の国じゃないんだし。
モンゴルに限らず世の中というのはとかく不合理で不公正なものなんだよね。
現状を肯定したり問題から目をそむけるつもりは無いんだけど、でも長く暮らしてゆくためには達観しないといけない部分も確かにあるんじゃないでしょうか。
それにね、いろいろと不愉快な目にあっても、〈それがどうした〉って思って、突っ張っていかないともたないのよ。
とりあえず今日も無事に家に帰って来れた、明日食べるものもあるっていう状況だけで良しとしましょう。
世の中には本当に辛酸をなめている人も大勢いるわけで、それに比べれば自分自身の日常での細かな問題の大半は〈それがどうした〉って考えて片付けられレベルのことが多いんだ。
これはあくまでも自分自身の日常についての個人的な考えだから、モンゴル社会を良くするために誠実に日夜奮闘している方たちの働きはもちろん素晴らしいと思うし、何かのひどい被害にあった人たちには心からの同情を覚えます。
モンゴル人や外国人の知り合いの中にも、スリや強盗、暴力などの被害にあった人たちが少なからずいるので。
モンゴルで暮らしていて日本では経験できない素敵なことや嬉しくなるような出来事もたくさんあるんだけどね。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1992/05/29
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