檀流クッキング

近頃は肉の値段が高くて豆腐ばかり食べてます。
以前は鶏肉なんて高値の花だったんだけど、最近は牛肉、羊肉の値段が上がったので、鶏肉も相対的に安くなってしまいましたよ。昔は鶏肉料理って、御馳走感があったのにねー。
いつも買っている豆腐も100トゥグルグほど値上がりしたのですが、それでも一丁600トゥグルグだから、お肉よりは安いんだよね。
ただ、日によって豆腐の味がけっこう違っているので、あたりはずれが激しかったりもするのですが。
やっぱり日本の豆腐は旨いです。なんであんなに旨いのかね。
帰国のたびに日本の豆腐を食べるのが本当に楽しみなんだ。


モンゴル料理が大好きで、世界で一番旨い料理はモンゴル料理だと固く信じている人や、毎日でもモンゴル料理食べたいっていう人も世の中には(たぶん)いるのでしょうが、個人的にはやっぱりモンゴル料理オンリーの生活はちょっときついのです。
日本で生まれ育った日本人の味覚が和食ベースになるのは当たり前。
体が当然のごとく日本の味を求めますよね。
日本は食べ物が旨いよね。異国に暮らしているとつくづく思います。
美味しいものが日常的に食べていられる生活って、幸せですよね。やっぱり。


モンゴルで新鮮な海産物を求めうるべくもないのですが、それでも工夫して普段の食生活を喜びのあるものにするのって大事じゃないかなと個人的には感じています。


で、ウランバートルの日々の暮らしの中で、けっこう頻繁にページをめくっては刺激を受けているのが、「壇流クッキング」なのです。

檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)

檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)

檀一雄が昭和44年から46年まで新聞に連載した料理指南の本でありますが、目次にずらりと並んだ92種類もの料理名を眺めているだけで心が沸き立ってきます。どれも実にうまそうなんだなあ。
この本の中にはけっこう臓物系の料理が紹介されているのでモンゴルでは特に実用的ですね。
なによりも檀一雄の文章がこの本の肝でしょう。
簡潔にして平明な言葉を連ねているだけなのに、なぜこれほどまでに食欲を刺激し、人の心に希望と意欲を湧き起こすことができるのでしょうか。すごいです。


ページをめくっていると、自然と料理欲が湧いてくるんですよね。
料理なんて詰まるところ食材を食べれるように加工するっていうことなんだから、質面倒くさい能書きはいらないし、自分の好きな味付けにすれば事足りるんだよね。
事細かな分量や手順なんて、自分で決めればすむことですよね。子供じゃないんだから。
料理なんて難しいことじゃない、肉は加熱するだけで食べれるわけで、そこに塩で味付けすりゃあ、食べる喜びが幾らかましになるというわけなんだよね。
「檀流クッキング」に満ちている大らかな気分は、食べるということの本質と直接的に結びついている気がします。
自分の食べたい物を自分で作るっていうのは、やっぱり格好いいよね。


しかしまあ、世の中には旨そうなものが一杯ありますね。
特にこの本の中では中華料理関係の味付けのものが多いので、いろいろと応用しやすいのではないでしょうか。モンゴルでは。
ウランバートルでは中華食材が比較的容易に手に入りやすいので、大抵の料理は問題なく作れると思いますし、中国人コックの働いている中華料理屋も多いから、実際に本物の料理を味わって自宅で味を再現する点でもいいですよね。


モンゴルに住んでいると、なぜか自然と料理関係の本が増えてくるんですよね。
食べ物は大事よ。ほんとうに。
安全で美味しいものが毎日食べれるような生活は幸せだとつくづく思います。


新・檀流クッキング (集英社文庫)

新・檀流クッキング (集英社文庫)